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キャリアオーナーシップ きゃりあおーなーしっぷ

公開日:2025.04.01
キャリアオーナーシップ

近年、急速な技術革新やビジネス環境の変化に伴い、企業にとって「リスキリング」の重要性が高まっています。リスキリングとは、従業員の既存のスキルを更新し、新しい能力を身につけさせることで、変化する職場のニーズに適応させるだけでなく、新しい業務や職業にも対応できるようにする取り組みです。

本用語集では「キャリアオーナーシップ」に関連する概念を初心者にもわかりやすく解説していきます。

「キャリアオーナーシップ」をひとことでいうと?

キャリアオーナーシップとは、個人が自らのキャリア形成に主体性(=オーナーシップ)を持って取り組む姿勢や行動を指します。これは、企業まかせではなく、自身のキャリアを自らの手で切り拓くという考え方です。

キャリアオーナーシップ の基本概念

キャリアオーナーシップの本質は、自分のキャリアに対する「当事者意識」と「主体性」にあります。会社まかせのキャリア形成ではなく、自分で将来を選択し、必要なスキルを習得し、キャリアを築いていく姿勢が重要です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)【1】による職種の変化や、グローバル化による競争の激化により、従来の受動的なキャリア形成では対応が難しくなっています。自分の市場価値を理解し、継続的な学習と成長を通じて、変化する環境に適応していく必要があります。

また、ワークライフバランス【2】や個人の価値観も多様化しており、画一的なキャリアパス【3】ではなく、個人が主体的に自身の働き方やキャリアの方向性を選択することが求められています。そのため、キャリアオーナーシップは、個人の成長と幸福度の向上において不可欠な要素となっています。

キャリアオーナーシップが注目されている背景

近年、キャリアオーナーシップが注目される背景には、以下の要因が挙げられます。

労働市場の変化

終身雇用や年功序列といった従来の雇用形態が揺らぎ、個人が自らのキャリアを主体的に設計する必要性が高まっています。そのため、自身のキャリアを自ら構築する能力が不可欠となっています。

技術革新とグローバル化

技術の進歩やグローバル化により、求められるスキルや職種が急速に変化しており、個人の柔軟な対応が求められています。このような環境下では、継続的な学習への主体的な取り組みが成功の鍵となります。

人生100年時代の到来

平均寿命の延びに伴い、長期的なキャリアプランニングが必要となり、自身のキャリアを主体的に考える重要性が増しています。このため、長期的な視点でキャリアを主導する力がますます重要になっています。

キャリアとオーナーシップの関係性

キャリアとオーナーシップを組み合わせた「キャリアオーナーシップ」は、自分のキャリアを「所有物」として捉え、その発展や方向性に対して主体的な責任を持つ姿勢を意味します。具体的には以下の3つの要素が含まれます。

主体性

自分のキャリアを他人まかせにせず、自ら選択し、決定する姿勢。例えば、会社からの異動打診を待つのではなく、自ら希望する部署や役割に手を挙げたり、必要なスキルアップのための研修を積極的に提案したりすることです。

責任感

キャリアの結果や成果に対して責任を持つ意識。自分の選択の結果を受け入れ、たとえ困難な状況に直面しても、問題解決に向けて前向きに取り組む姿勢を持ち続けることです。また、失敗を恐れずにチャレンジし、その経験から学びを得ることも含まれます。

能動的な行動

目標達成に向けて必要な行動を自発的に起こす態度。具体的には、業界の最新動向をキャッチするための情報収集、社内外のネットワーク構築、新しいスキルの習得のための自己投資など、自らのキャリアを発展させるための実践的な行動を積極的に起こすことです。

このように、キャリアオーナーシップは単なる「仕事の選択」を超えて、自分のキャリア全体を自己の責任で築き上げていくという、より包括的な概念を表しています。

キャリア形成モデル:会社主導型からオーナーシップ型へ

企業環境や働き方が大きく変化する中で、従来の会社主導型のキャリア形成と新しいキャリアオーナーシップ型のキャリア形成を理解し、自身のキャリア戦略を立てることは非常に重要です。両者の特徴と違いを明確に理解することで、変化する労働市場において最適なキャリアアプローチを選択できます。

 項目  会社主導型  キャリアオーナーシップ型
 キャリアの方向性   会社が決定   個人が主体的に決定
 スキル開発   会社が提供する研修が中心   自己啓発を含む主体的な学習
 キャリアパス   画一的で予測可能   多様で柔軟な選択が可能
 成功の定義   会社内での昇進・昇格   個人の価値観に基づく達成感
 雇用関係   長期的な雇用保障   相互選択的な関係

この比較から、現代の働き方においてキャリアオーナーシップがより適応的であることが分かります。ただし、これは従来型が完全に否定されるということではなく、個人と組織の状況に応じて、両者のバランスを取ることが重要です。

キャリアオーナーシップ実践のための5つのステップ 

キャリアオーナーシップを実践するためのステップは、自身のキャリアを主体的にハンドリングし、持続的な成長を実現するための具体的な行動指針となります。

ステップ1:定期的な自己評価とフィードバック

キャリアの成長には、定期的な振り返りと評価が不可欠です。自分の成長を客観的に把握し、必要な改善点を見出すことで、より効果的なキャリア開発が可能になります。

  • 自身のスキル、経験、市場価値を定期的に評価する
  • 上司や同僚からのフィードバックを積極的に求める
  • キャリア目標の進捗状況を3ヶ月ごとにレビューする

ステップ2: 具体的なアクションプラン

明確な目標設定と実行可能な行動計画は、キャリア開発の基礎となります。時間軸を意識した計画立案により、着実な成長を実現できます。

  • 短期(3ヶ月)、中期(1年)、長期(3-5年)の目標を設定
  • 各目標に対する具体的な行動計画を立案
  • 毎週の学習時間を確保し、スケジュールに組み込む

ステップ3:実践的なスキル開発

現代のビジネス環境では、継続的なスキル開発が不可欠です。オンライン学習と実務経験を組み合わせることで、効果的なスキルアップを図ることができます。

  • 業界で求められる最新スキルのリストアップ
  • オンライン学習、eラーニング教材の活用
  • 実務プロジェクトへの積極的な参加

ステップ4:プロフェッショナルネットワークの構築

キャリア発展には、幅広い人脈形成が重要です。様々な機会を通じて専門家とつながり、情報交換や相互学習を行うことで、新たな可能性が広がります。

  • プロフェッショナルSNSの活用
  • 業界セミナーやカンファレンスへの参加
  • 社内外のメンターとの定期的な対話

ステップ5: キャリアポートフォリオの作成と更新

自身の成長と実績を体系的に記録することで、キャリアの方向性を明確にし、将来の機会に活かすことができます。

政府機関によるキャリア開発支援

日本の政府機関は、個人のキャリア開発を国家的な重要課題として認識し、様々な支援制度や政策を整備しています。これらの取り組みは、個人のキャリアオーナーシップを促進し、労働市場の活性化と人材の育成を目指しています。

経済産業省のキャリアアップ支援事業

経済産業省は、社会人のキャリア発展を支援するため、包括的な支援体制を構築しています。具体的には、専門家によるキャリアカウンセリング、新しいスキルを習得するための教育プログラム、そして希望者への転職支援サービスを提供しています。これらのサービスは互いに連携し、個人の継続的な成長とキャリアの発展をサポートします。

参考リンク:リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業事|経済産業省

厚生労働省のコンサルティング制度

厚生労働省が推進する国家資格制度により、専門的なキャリア支援を受けることができます。有資格のキャリアコンサルタントが、個人の適性や希望に応じた具体的なキャリア設計のアドバイスを提供します。

参考リンク:キャリアコンサルタント制度|厚生労働省

厚生労働省の人材開発支援助成金

厚生労働省の人材開発支援助成金は、事業主が従業員に職務関連の専門知識や技能を習得させるための職業訓練を実施した際に、その訓練費用や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

参考リンク:人材開発支援助成金|厚生労働省

これらの支援制度を活用することで、キャリア開発にかかるコストを抑えながら、効果的なスキルアップやキャリアオーナーシップを促進することができます。

経営者・人事担当者のための「キャリアオーナーシップ」Q&A

Q1:会社の方針と個人のキャリアプランが異なる場合の対応は?

 A: 企業の立場としては、従業員のキャリアプランと会社の方針の違いを、組織の成長機会として捉えることが重要です。まず、定期的な1on1ミーティングやキャリア面談の制度を設け、従業員の志向性を早期に把握することをお勧めします。その上で、会社としての期待役割や成長機会を明確に示しながら、従業員の希望するキャリアパスを会社の経営方針や事業戦略に組み込める可能性を検討します。例えば、新規プロジェクトの立ち上げや、部署間ローテーション、社内副業制度の導入など、柔軟な施策を通じて、個人のキャリア志向と組織のニーズをすり合わせることが可能です。

Q2:キャリアオーナーシップを実践すると転職されてしまうのでは?

 A: 確かに、キャリア目標の達成のために転職という選択肢を検討することも、キャリアオーナーシップの一要素として認識されています。とはいえ、キャリアオーナーシップを実践することは、必ずしも転職を意味するものではありません。むしろ、キャリアオーナーシップは現在の組織内での成長機会を追求することも含んでおり、社内公募制度の活用や学習支援制度の利用を通じて、現在の会社内でのキャリア発展を目指すことができます。実際には、キャリアオーナーシップと会社への忠誠心は両立可能であり、自己成長を通じて会社にも価値を提供できる相互補完的な関係を築くことができます。

Q3: 部門異動や職種変更もキャリアオーナーシップの一環でしょうか?

A: はい。部門異動や職種変更は、新しいスキルや視点を獲得する重要な機会となります。例えば、営業部門から企画部門への異動は、顧客視点とビジネス戦略の両方を理解できる貴重な経験となりますし、エンジニアからプロジェクトマネージャーへの職種変更は、技術知識とマネジメントスキルを組み合わせたキャリアを築くことができます。ただし、異動や変更を検討する際は、自身の長期的なキャリア目標との整合性を十分に考慮することが重要です。

まとめ

キャリアオーナーシップは、変化の激しい現代社会に不可欠なマインドセットといえます。組織の持続的な成長には、このキャリアオーナーシップの推進が重要な戦略となります。従業員の自律的なキャリア開発を支援することで、組織の革新性と競争力が向上し、優秀な人材の定着につながります。個人と組織の双方にとって有益な関係を築くには、個人のキャリアオーナーシップと組織的なサポートを効果的に融合させることが鍵となります。これからの人材戦略において、キャリアオーナーシップの促進は最重要課題の一つと位置付けられるでしょう。

関連用語

【1】DX(デジタルトランスフォーメーション)

デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや組織文化を根本的に変革し、顧客価値や競争力を高めるプロセス。単なるIT化ではなく、デジタル技術を核とした経営戦略の変革を意味する。

【2】ワークライフバランス(Work-Life Balance)

仕事と私生活の調和を保ちながら両立させる考え方。企業が柔軟な働き方を提供し、従業員の生活の質と仕事の効率を向上させるために重要。

【3】キャリアパス(Career Path)(リスキング用語集22

従業員の職業人生における成長の道筋。個人の能力開発や目標達成を支援するとともに組織の人材育成戦略にも役割を果たす。

【4】キャリアポートフォリオ(Career Portfolio)

個人が持つスキルや資格、仕事の経験や成果をわかりやすくまとめた記録のこと。